場所:

米国、カリフォルニア

オンプレミスとクラウドリソースとのバランスを図る

世界で最も有名なアニメーションスタジオの1つとして知られるドリームワークス・アニメーション(DWA)は、型にはまらないヒーローと見事なストーリー展開で多くの優れた作品を生み出しています。カリフォルニア州グレンデールに所在するDWAのアーティスト、アニメーター、技術者は、毎年数百時間ものアニメ映画、テレビ番組、テーマパークコンテンツを制作しています。その作品としては、『シュレック』、『マダガスカル』、『カンフー・パンダ』、『ヒックとドラゴン』、『トロールズ』など、誰もが知っているような著名な作品も含まれています。

見事な成功物語は、作品の中だけではなくDWA自身にも訪れているといえます。スマートデバイス、モビリティ、感動的なストーリーに対する消費者のニーズは、新しいコンテンツへの需要を押し上げ、DWAのビジネスはかつてない活況を呈しています。しかし、その需要を満たすには、コンピューティング能力とストレージ容量を拡張した上で、リモートで業務を行うアーティストに適切なIT環境を提供する必要があります。

DWAのアニメーション作品では1つの場面だけで最大150万個ものデジタルファイルを使用することから、大規模なスペックが要求されます。実際に2020年に公開されたアニメーション作品『トロールズ・ワールド・ツアー』は、1ペタバイトを超えるデータストレージと、そのバックアップを必要としました。また、そうしたファイルの処理に要する計算リソースも膨大です。最近のCGA(Computer-Generated Animation)ムービーでは、DWA作品の代名詞とも言える高精細アニメーションのレンダリングに2億時間もの膨大な時間が費やされます。

現在のコンテンツチームには、超高解像度アニメーションや特殊効果の制作に必要とされる高性能ワークステーション、計算能力、ストレージ容量を備えた専用の環境が必要です。このように、増大するコンテンツ需要に応じて制作能力を高めるために、DWAは最新のテクノロジーを活用すると同時に、コンテンツ制作ワークフローを強化しています。オンプレミスとクラウドリソースのバランスを図ることが、スタジオの拡張能力の中核を担っています。DWAの最高技術責任者ジェフ・ワイク氏は次のように説明しています。

「ピーク時の規模に合わせてデータセンターのスペックを設計することは経済的には合理的ではありません。さまざまな種類のプロジェクトがストップしたりスタートしたりしており、またプロジェクトごとに終了時期やスケジュールも異なります。そのため、たいていの場合、用意したリソースは十分に活用されないままとなってしまうのです」

規模の拡大に加えて、DWAは、制作プロセスの柔軟性向上を目指して、必要なときに必要な方法でアーティストがデータにアクセスできるようにしました。アーティストによるリモートデスクトップへのアクセスや仮想マシン、仮想ストレージの利用を効果的に行えるようになれば、制作プロセスの変革が実現します。

「当社は、利用可能なリソース間のシームレスな移行を行うために、自社のデータセンターをクラウドとして運用できるアプローチを採用し、真のハイブリッドクラウドへの道に進むことにしました」

Jeff Wike ドリームワークス・アニメーション 最高技術責任者

これを踏まえてDWAは、仮想化とマイクロサービス、サイトリライアビリティエンジニアリング(SRE)、セキュリティデザイン、ペネトレーションテスティングを通じて自社のLinuxベースのデータセンター環境を発展させ続け、近代的で俊敏性の高い運用モデルへの移行計画を推進しました。このとき同社の支援にあたったのがDXCテクノロジーです。

なおDWAは、パブリッククラウド環境での検証を開始し、自社のオンプレミスのデータセンターにクラウドネイティブなアプローチを取り入れました。

「当社は、利用可能なリソース間のシームレスな移行を行うために、自社のデータセンターをクラウドとして運用できるアプローチを採用し、真のハイブリッドクラウドへの道に進むことにしました」とワイク氏は語ります。

DWAにとって、成功には社外の専門知識が不可欠だったといいます。「クラウドコンピューティング、クラウドストレージ、ワークステーションへのリモートアクセス、マイクロサービス開発などのテクノロジーは、いずれも急速に進化しており、その種の専門知識を社内で蓄積するには時間がかかり過ぎてしまいます」とワイク氏は語り、さらにこう続けます。

「そうした中でDXCの協力もあり、クラウドアーキテクチャに関する専門知識とベストプラクティスを得ることができました。おかげで、ハイパースケーラーの機能を最大限に活用できるようになっています」

デジタルコンテンツパイプラインの導入

DWAは、DXCと共同して分散型コンテンツ制作に向けたDWAのビジョンのコアとなるコンポーネントを構築しました。

「DXCとのパートナーシップでは、当社の制作能力、とりわけデジタルリソースの拡張に重点を置いています。それによって、現在では新しいプロジェクトに労力をかけずに取り組めるようになりました」。こう話すのは、DWAのテクノロジー/コミュニケーション/戦略的アライアンス担当シニアバイスプレジデントのケイト・スワンボーグ氏です。

中でもDXCは、あるプロジェクトにて仮想デスクトップ環境(VDI)を徹底的に調査しました。DXCは、各アーティスト部門のワークフロー、グラフィックス、入力デバイス、カラーとサウンドの要件を満たすベストプラクティスを確立するために、DWAの要件のプロセスレビューを開始しました。アニメーション制作プロセスでは、通常のリモートデスクトップアクセスでは必要とされないような忠実なグラフィックス再現度、低レイテンシー、サウンドの同期が求められます。

DXCチームは、アーティストたちと直接連携しながら、スタジオ内と同レベルの作業体験が得られるように、リモートパフォーマンスをピークにもっていくための最適なソリューションとキーパラメーターを特定し、それが最適化されるまで、さまざまな構成を繰り返して実験しました。

徹底的な調査の結果、DXCは、HPのZCentral Remote Boostをスタジオで使用すること、および将来的なクラウドワークフローをサポートするさまざまな追加機能がDWAのリモート機能をサポートする上でも最適であると判断しました。

「取り組みを進める上で重要な要素の1つは、DXCが専門家を派遣して当社の仕事の進め方を深く理解してくれたことです。当社独自の要件の理解と、DXCの持つ専門知識および経験が相まって大きな成果につながりました」(ワイク氏)

今回の取り組みでは、全体的なユーザー体験を向上させる方法も明確に示されました。例えば、ドリームワークスは、DXC傘下のプロダクションデザイン会社argodesignのUI/UXの専門知識を活用して、映画制作の過程で生まれる数百万のデジタルアセットをアニメーションアーティストやテクニカルディレクターが管理する際に役立つソフトウェアスイートのインターフェースを作成しています。

「DXCとのパートナーシップでは、当社の制作能力、とりわけデジタルリソースの拡張に重点を置いていいます。現在では、新しいプロジェクトに労力をかけずに取り組めるようになりました」

Kate Swanborg ドリームワークス・アニメーション テクノロジー/コミュニケーション/戦略的アライアンス担当シニアバイスプレジデント

ミッションクリティカルな業務を継続するために

仮想的な作業環境へと拡張したメリットの1つは事業継続性の確保です。しかし、当時はその重要性に誰も気づいていなかったとワイク氏は振り返ります。

「南カリフォルニアに居住していたことから、私たちは地震によって業務が中断する可能性を常に考えていました」とワイク氏。しかし「パンデミックのことは念頭にありませんでした」と言います。

VDIの検討は、DWAの包括的なハイブリッドIT/クラウドコンピューティング戦略の一部を形成することに役立ちました。評価が行われたきっかけは新型コロナウイルスではありませんでしたが、DXCと共同で行った評価作業のおかげもあって、ドリームワークスはリモートワークフローとHPのZCentralの利用に向けて舵を切る体制が整っていました。

2020年3月中旬には、業務を継続するための計画が重要であることが誰の目にも明らかになりました。大規模なロックダウンや外出禁止令により、多くのスタジオが仕事の中断を余儀なくされました。事業継続性の確保が単なる緊急対応策でなくなったのはそのときだったとワイク氏は話します。

「事業継続性の確保は2日ほどで一気に最優先事項になりました。DXCの協力を得て行った下準備と、DXCが私たちにもたらした専門知識のおかげで、素早く舵を切ることができました。当社のアーティストは数日のうちに仕事を軌道に乗せ、私たちは映画制作の中間目標をすべて達成することができました」(ワイク氏)

「DXCの協力を得て行った下準備と、DXCが私たちにもたらした専門知識のおかげで、リモート環境への対応に素早く舵を切ることができました」

Jeff Wike ドリームワークス・アニメーション 最高技術責任者

緊密なコラボレーション

DWAは、アーティストが新しいデジタルソリューションやワークフローを受け入れない限り、成功は望めないだろうと実感していました。例えば、チームは音声とアニメーションを高い精度で同期させるためのソリューションの検証に多くの時間を費やしました。「『ほぼ完全な同期』では通用しないからです」とワイク氏は話します。

「DXCは私たちの仕事のやり方を理解しています。いわば統合チームの一員なのです。私はDWAのエンジニアと仕事をしているのか、DXCのエンジニアと仕事をしているのか、よくわからなくなることがありますが、それは私たち全員でワンチームだからです」(ワイク氏)

またスワンボーグ氏はそれに同意しつつ、「DXCとのパートナーシップは、DWAが現在のリモートワークフローの目標を達成すると同時に、分散開発パイプラインという将来のビジョンの実現に取り組む上でも役立っています」と付け加えます。

「DXCと提携したおかげで、自分たちの仕事や働き方を今までより高いスピード感と自信を持って変革できるのだと、私達自身の力に確信を持てました。今後も、柔軟性と俊敏性を維持しつつ当社のインフラストラクチャーとデータワークフローを将来も使い続けられるようにするために、DXCと連携して取り組んでいきます」(スワンボーグ氏)

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